BAAD LIVE “B-SOUL”#1〜Kiss Me〜

 5月6日。この日はゴールデン・ウィークあけということで、疲れの溜まっただるい体で学校や会社に行く人々の姿があちこちで見受けられた。だが、BAADファンにとっては、連休さえも早く過ぎて欲しいと思っていたに違いない。なぜならこの日は、4月の大阪に続いて東京渋谷のライブ・ハウスnestで、BAADが全国2カ所だけでライブを行うという、ファンにとっては貴重な日となっていたからだ。  19時ピッタリにライブ会場に入ると、当たり前だがすでにオーディエンスで一杯になっていた。その後もぞくぞくと人数は増えていき、ライブ会場は始まる前からすでに息苦しいほどの熱気に包まれていた。
 19時15分。19時スタートということなので、予定より少し遅れている。この始まりを待っている時の緊張感がタマラナイ。早く始まって欲しいという願いと、始まったらそのままアッという間に時が流れて終わりが来てしまうという切ない思い。この裏腹な感情は、ライブを訪れる度に襲いかかってくる。でもやっぱり、早く見たいし聴きたい気持ちは抑えられない。周りのオーディエンスも、徐々にテンションが高くなってきているのが伝わってくる。
 会場に流れていたサウンドのボリュームが大きくなっていき、遂にメンバーが1人づつ登場。新井康徳がドラム・セットの椅子に座り、小林正道がステージ左でベースを肩にかけ、大田紳一郎はステージ右でギターを肩にかける。そして、バンド・メンバーがそれぞれの位置にスタンバイしたのを見計らったように、ヴォーカルの秦秀樹がステージ真ん中のマイクスタンドの前に立ち、ポップなナンバー「胸に抱いて忘れない」でライブはスタート。大音量のサウンドが床から身体に伝わってきて、全身で振動を感じる。このライブ会場に入った時に、他の会場とは違ってフロアが木の床であることに気付いた。木という性質に漂っている温かさやぬくもりと、BAADが発するサウンドの刺激性が混じりあったせいか、いつも以上にサウンドがダイレクトに胸へと響いてくるような感覚があった。もちろん、気のせいと言われてしまえばそれまでだが、そんな心地良いバイブレーションをライブ中ずっと受けていたことは事実だ。
 今回のライブでは未発表のものが3曲含まれていたが、その内の1曲がこのライブでは2曲目にもってこられていた。しかし、ファンは微塵の戸惑いも見せずに身体を揺らして踊っているし、メンバーの方も不安の表情がまったく無い。すでに汗を流している秦の表情も軽やかで、未発表曲というものが今のBAADにとっては何のハンディにもプレッシャーにもなっていないことが感じられた。これはバンドとしての自信の表れともいえるだろう。
 5月20日にリリースした「FOLLOW ME」も披露され、その後、またもや未発表の「NAKED」がプレイされた。この曲はハードなロック・ナンバーで、イントロとエンディングのドラム&ベースのメロディが印象的な曲。ポップなメロディの中に、ベースとドラムのリズム隊がBAADサウンドに厚みを加え、それゆえに大田のシンプルで軽やかなギターが生きてくる。ここに秦のヴォーカルが加わることで、もはや一つのBAADという型となって聴く者の耳へと自然に注ぎ込まれてくる。BAADというバンドのスタイルが確立されたことを感じずにはいられない。
 ライブは後半戦へと突入し「WILD THING」では、歌の途中で秦から皆に一緒に歌って欲しいとのリクエストが出て、サビの“BE THE WILD THING”の部分をオーディエンスが練習する。メンバーから“もう1回”“まだまだ”という声が出る度にやり直しをし、必死になったオーディエンスの声も次第に大きくなっていく。メンバーからOKが出た所で、サビの部分を皆で歌って再び「WILD THING」。今まで受け身で感じていたライブの中で、この瞬間に誰もがBAADと一つになれたと実感し、これこそ“ライブ(生)”の良さなのだと思ったことだろう。そして最終曲「Kiss Me」に移り、ライブは終わりを迎えた。
 アンコールの声に応え、メンバーが再び登場し「君が好きだと叫びたい」、そして本当に最後の曲「I Wanna Hold Your Heart」がプレイされた。この曲では秦のハーモニカを吹く姿が見ることができ、大田や小林もステージ前方へ出て激しくプレイ。最後の最後までオーディエンスを興奮の渦へと巻き込み、大きな余韻を残してライブは終了した。ステージに一列に並んだメンバーはファンが差し出した手に握手で応え、名残り惜しそうにステージ上を去って行った。
 ライブ中のMCで秦は“ライブに出て、皆のパワーをもらってレコーディングに入っていました。早く皆に会いたかったです”“CDだと反応が分からないので、ライブでじかに皆の反応が見れて楽しい”などと言っていた。もはやライブは、BAADとファンとの間で大いなる相乗効果を生み出す必要不可欠なものとなり、今後の彼らの作品にもそれは顕著に反映されていくことが予想される。今回のライブを見たことで、BAADの“これから”が、垣間見れたような気がしてならない。(白河 倫<music freak magazine>)

〜セット・リスト〜
1.胸に抱いて忘れない 2.百戦錬磨の恋の戦士になって 3.愛したい愛さない 4.FOLLOW ME 5.SADISTIC LOVE 6.NAKED 7.DON'T CRY NOW 8.雨に濡れたヒマワリ 9.もう悲しませない 10.So Many Cry 11.WILD THING 12.戻れない時間の中 13.KISS ME

EN1. 君が好きだと叫びたい EN2.I Wanna Hold Your Heart

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